【手術が必要な方向け】将来の手術費用は請求できるか

将来の手術が必要となる場合

事故による傷病は様々ですが、残念ながら完治しないケースがあります。
主治医から将来の手術を示唆された場合、これは相手に賠償請求できるのかという問題があります。

ー 目次 ー

将来の手術費用の請求可否

一般的に症状固定後の治療費は否定されます。残存した症状に対する補償は後遺障害の損害として考慮されるためです。
もっとも、症状固定状態でありながら、傷病によっては将来の手術がほぼ確実に必要になるケースもあります。
そのような場合に、将来の手術費用が裁判例でも認められているケースがあります。

将来の手術費用について判断が下された事例

①京都地裁平成26年7月1日判決 (否定) 将来の人工関節置換術
右大腿骨骨頭脱臼骨折で右下肢の疼痛・しびれ感,右股関節の機能障害について併合11級の認定を受けた被害者のケースで、将来的に人工関節置換術が必要になることがあるとして、人工関節置換術を受けた場合の将来の手術費用が争点になった事案。
→裁判所は、手術の蓋然性は具体化していないこと、将来上記手術を行う場合には健康保険で対処される可能性も高いことからすれば、現時点で損害が具体化しているとは言い難いこと、上記手術の可能性やその費用については後遺障害慰謝料の中で考慮するのが相当として、将来の手術費を否定した。

②東京地裁平成25年6月24日判決 (否定) 将来の人工股関節置換術
右寛骨臼骨折後の右骨盤骨の著しい変形につき12級5号該当、右寛骨臼骨折に伴う右股関節の機能障害(右股関節部痛を含む。)につき12級7号該当で、併合して11級の被害者が、将来,変形性股関節症が進行することによる人工股関節置換術費用を請求した事案。
→被害者を診察していた医師の再手術の必要性や時期に関する回答をふまえて、「医師も手術の可能性について言及するのみであり,その必要性,相当性が高いとまでいうことは困難」と判断して、将来の手術費用を否定した。

③東京地裁平成17年11月28日判決 (肯定) 将来の人工股関節全置換術
左下肢機能障害、下肢の長さ1センチメートル相違の症状が残存し、それぞれ8級7号及び13級9号に該当し,併合により7級と認定された被害者が、10年ごとに再手術として人工股関節全置換術を受ける必要があるとして、将来の手術費用を請求した事案。
→被害者が、人工骨頭置換術を受けたことに伴い,骨盤の股関節臼蓋部が経年変化により摩耗することから,10年ごとに再手術として人工股関節全置換術を受ける必要があると判断して、将来の手術費用を認定した。

④横浜地裁平成24年1月26日判決 (肯定) 将来のインプラント手術費用
障害歯10歯の喪失または著しい欠損につき後遺障害等級11級4号の認定を受けた被害者が、インプラントの耐用年数を15年として算出した平均余命までの将来のインプラント手術費用を請求した事案。
→主治医からの、インプラント治療の一般的な成功基準、学会での耐用年数に関する報告状況の意見から、控えめにみて耐用年数を20年とみるのが相当であるとした。平均余命までの回数分のインプラント手術費用を認定した。

⑤福岡地裁平成28年4月25日判決 (否定) 瘢痕(醜状痕)の形成術
左上肢、左下肢、右下肢に瘢痕及び線状痕につき、それぞれ後遺障害等級14級が認定された被害者が、後頭部の瘢痕及び背部瘢痕の形成術の将来の手術費用を請求した事案
→手術によって,瘢痕の外観がどの程度回復するかを認めるに足りる証拠はないこと、医師が治療上将来の手術が必要であるとまでは述べていないことなどから、直ちに将来の手術の必要性があるとは認めるに足りないとして、将来の手術費用を否定した。ただし、慰謝料の算定に当たって斟酌すべき事由とされている。

裁判例からみる将来の手術費用認定に関する要素

前(1)の①②③はいずれも人工股関節置換術の将来の手術費用ですが、結論を異にしています。
③の肯定された事案では、実際に被害者が人工骨頭置換術を受けており、再手術を受けなければならない可能性が高いものでした。他方で①②については、症状経過によっては、将来的に人工関節置換術を受けなければならない可能性があるという事案でした。
そのため、裁判所は、将来の手術費用について、将来の手術を要する医学的な必要性と蓋然性などを判断要素としていると思われます。あくまで可能性があるというだけであると消極的な傾向であり、積極的に手術が必要な理由の立証が求められていると考えられます。そして、裁判所としては主に医師の見解を重視して判断しているようです。
そのため、被害者の残存した症状の程度、手術の実施の有無、将来の手術の必要性・内容の合理性・相当性などを、医師の見解をもとに判断する傾向にあるのではないかと思われます。

将来の手術費は金額も少なくありません。

将来手術が必要になるかもしれないと主治医に言われた場合、医学的な必要性などを確認しましょう。その上で手術が必要となる高度の蓋然性がある場合、主治医にお願いして手術費用の見積りや診断書(理由書)の作成を依頼しましょう。