【慰謝料の増額事由】交通事故で基準以上の慰謝料増額が認められるケース

慰謝料が増額される場面を知ろう

悪質な事故で重大な被害を被った場合、定型的に算出される慰謝料では心情的に受け入れ難いものがあります。
そこで、慰謝料が増額されるケースというのはどのような事由があるときなのでしょうか。

慰謝料の算定と増額事由とは


(1)慰謝料の算定基準
交通事故における慰謝料については、自賠責においては1日あたり4300円、任意保険会社では内部基準に基づいて定められていますが、加害者が負う賠償額はこれに拘束されるわけではありません。
裁判所が判断するときは、多くが損害賠償額算定基準(いわゆる「赤い本」)といわれる基準が採用されています。
いずれの基準でも通院日数や治療期間を目安に定型化されています。
ただ、これはあくまで目安に過ぎず、裁判官の自由心証に基づいて、裁量的に金額が決められることになります。

(2)慰謝料の増額事由
以下のような要素があるケースで慰謝料の増額が認められています。

・加害者の故意による事故の事案
・飲酒運転、ひき逃げ、無免許運転、著しい速度超過等の運転行為が悪質な事案
・事故態様が凄惨な事案
・事故後の加害者の態度や行動が悪質な事案

飲酒運転、ひき逃げ等の悪質な事故態様も影響します

(3)増額事由が検討・考慮された裁判例

大阪地裁令和2年3月6日判決   死亡した事実を知らせない加害者の対応
死亡した被害者の親に対して、加害者が事故後1年7か月以上にわたり、本件事故により被害者が死亡した事実を知らせかった事案で、死亡を知る術がなかったことが精神的苦痛の度合いを高めていると認定。

大阪地裁令和2年2月28日判決 事故態様が凄惨で入院を繰り返したケース
被害者が事故後,40分以上も右足を大型貨物車両に轢過されたままの状態となり、受傷内容も凄惨なものになったことや、一度は足の切断が検討されたり、5度にわたる入院を余儀なくされたりしたことなどから、基準以上の入通院慰謝料額を認定。

大阪地裁令和2年2月21日判決 同乗者が事故後現場から逃走したケース
逃走時に車両を運転していたのが被告ではないとしても,被告が救助や警察への通報を行わずに現場を立ち去ったことは,慰謝料算定などの点で不利に評価されてもやむをえないと判示した。

大阪地裁令和2年2月7日判決(否定) 葬儀に参列しなかったことが増額事由には該当しないとしたケース
加害者やその使用者が葬儀に参列せず、事故の約1か月後に謝罪しただけで、刑事裁判においても遺族らに挨拶しなかったこと等は慰謝料増額事由とは認められないとした。

大阪地裁令和元年12月20日判決 凄惨な事故状況、加害者側が謝罪対応なしのケース
加害者を使用する会社の役員が、遺族の謝罪の求めに理由もなく応じていないことに、誠意がないと感じることにも無理からぬものがあるとして、近親者固有の慰謝料を認定。

大阪地裁令和元年10月29日判決 居眠り運転のケース
加害者が事故の直前、仮睡状態に陥っていたものと考えるのが自然であり、過失は重大であるとして、これを慰謝料の増額事由として実質的に認定。

特に争いが出やすいのが、加害者側の不誠実な対応のケースです。死亡に準じる重大な事故で、加害者が積極的に悪態をつくなどの行為がある場合は増額要素として考慮されやすいですが、消極的な不誠実な対応(連絡があまりなかった、謝罪が1度しかなかった、名前を間違えられた等)の場合は、それのみでは考慮されにくいと考えられます。