協議離婚のケースでは、養育費について曖昧なまま約束して、不払いになるケースが少なくありません。
子供が成長するにつれて、塾代、授業料、受験料など養育に必要な金額は高くなります。しっかりと養育費を決めておくことが、自分を助けることになります。
養育費で決めなければならないこと
養育費を協議する場合、養育費の金額、養育費の始期・終期を決めなければなりません。
養育費の金額については、裁判所で養育費の算定表というもので簡易的に算定できるようになっています。
令和元年12月23日に改定公表されたものが、現時点(令和3年5月現在)での最新のものになります。
https://www.courts.go.jp/toukei_siryou/siryo/H30shihou_houkoku/index.html
算定表は、子供の数と子供の年齢によって分けられています。
表の縦軸が養育費を支払う「義務者」の年収、横軸が養育費を請求する「権利者」の年収になります。
さらに給与所得者(会社員)、自営業に分かれています。
双方の年収の交差したところが、養育費月額の目安となります。
養育費は基本的には養育費算定表に基づく範囲で決まり、特別な事情がない限り、算定表を超える金額を超えては認定されません。
養育費の始期については、離婚後、又は養育費の請求があった時(審判や調停申立時)からと考えられています。
他方で養育費の終期については、原則として子供が20歳になるまでと考えられています。既に子供が大学に進学しているケースでは、大学卒業まで認められることがあります。
なお、平成30年6月の民法一部改正により、成人年齢が18歳に引き下げられたことに伴い、養育費の終期がどのようになるかについてはまだ統一的な見解があるわけではありません。
法務省では、この点について以下のように説明しています。
法務省 「成年年齢の引下げに伴う養育費の取決めへの影響について」
養育費は,子が未成熟であって経済的に自立することを期待することができない場合に支払われるものなので,子が成年に達したとしても,経済的に未成熟である場合には,養育費を支払う義務を負うことになります。このため,成年年齢が引き下げられたからといって,養育費の支払期間が当然に「18歳に達するまで」ということになるわけではありません。
あくまで子供が未成熟である場合、親として扶養義務は免れません。そのため、仮に成人年齢引き下げに伴い18歳までの支払い義務しか課されなかったとしても、19歳の時点で大学進学・専門学校進学などで未成熟な状態(要扶養状態)である場合、改めて養育費請求ができるのではないかと思われます。
養育費の請求方法
①養育費の合意の方法
養育費の金額・始期終期が決まったら、書面で合意内容を残しておきましょう。
協議離婚では、離婚協議書・公正証書で作成し、調停では調書が作られます。
離婚協議書のメリットとしては、書面化することで後で未払養育費を請求できること、簡単に作成できて手間がかからないことにあります。
公正証書とは公証役場で作る契約書で、メリットとしては養育費の未払になったときに裁判を経ずに差押えができる点にあります。デメリットとしては、費用がかかること、原則として両当事者が公証役場に赴かないといけないことにあります。
②不払いの場合の請求方法
養育費の取り決めをしていない場合は、養育費の調停を申し立てをします。
離婚協議書で作成している場合は、未払の養育費について訴訟を起こし、判決取得後、差押えを行います。
公正証書又は調停調書で作成している場合は、直接、差押手続に入ります。
差押えは、相手方の銀行口座、会社の給与などが対象として考えられます。調停調書・公正証書、執行文付与、送達証明等の必要書類や申立書が必要になります。少々難しい手続ですので、弁護士事務所に依頼した方がよいと思います。
養育費に関するQ&A
- 相手が再婚した場合でも養育費の支払義務は残る?
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元配偶者が子供を連れて再婚したとしても、実親としては子供に対する扶養義務を免れるわけではありません。
もっとも、再婚の相手方が子供と養子縁組をした場合、養親が一次的な扶養義務者となるので、養育費の減額又は免除を求めることができるでしょう。 - 養育費はいらないと言って離婚した場合、後から養育費は請求できない?
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困窮してしまい、子供が要不要状態にある場合、養育費の請求が認められる可能性があります。
養育費をいらないといったときの経緯、その後の事情変更(失業、病気等)などから、不請求の合意の妥当性が検討され、子の福祉の観点から請求の可否が判断されます。 - 養育費は一括払いできるか?
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養育費の一括払いの合意をすることはできます。もっとも、注意点としては、子供の親権を持つ側の親が養育費を使い切り、子供が困窮している場合、追加の養育費の請求が認められる可能性もあります。あくまで子供に対する扶養義務が根拠となっているため、子供が困窮している場合、親として扶養しないとならないためです。
- 養育費額に債務は考慮される?
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養育費の支払義務者が個人的に負っている債務については、扶養義務に劣るため、考慮されないことが一般的です。
夫婦の共同生活で生じた債務については、自動車ローン代金について考慮された事例があり、住宅ローンについては算定表額からの金額算定にあたり考慮された事例があります。 - 無職の場合、養育費の支払い義務はなくなるか?
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無職の理由が病気などであれば別ですが、就労できる状態の場合、潜在的稼働能力があるとして平均賃金センサスなどを参考に収入を認定して養育費額を算定する傾向にあります。
養育費の相場を知っておくことは重要です。相手方が不当に低い養育費額を主張してきたとしても、これを拒んだ方がよいか判断することができます。