面会交流の決め方と実現方法

面会交流は子の福祉のために実施するもの

監護者と非監護者との間でしばしば争いになる面会交流の実施ですが、子供のために実施されるものであり、両親の感情的な対立は直接影響を及ぼすべきものではありません。
もっとも、対立が平行線を辿った場合の実現方法について説明します。

面会交流の条件の決め方について

面会交流は、監護者の下にある子と非監護者が面会、手紙、オンラインその他の方法により、交流することをいいます。
一般的に非監護者は、子が通う学校に問い合わせても、断られて子供の状況を確認できないため、直接の交流が子供の状況を知る貴重な機会となります。
面会交流の実施にあたっては、別居又は離婚が前提ですので決して良好な関係が監護者と非監護者との間にあるわけではありません。
監護者としては、相手方に対する不信感、子供の拒絶、DVや連れ去りの不安、子供が相手に愛情をもつことへの嫉妬など、様々な感情的な背景や面会交流の日程的・場所的制約を原因として、拒絶したり反発したりします。
逆に非監護者が面会時に子供にとって望ましくない遊び方や育児をすることもあり、溝が深まることもあります。
このような面会交流を円滑に実施するためには、面会交流の条件をきちんと決める必要があります

非監護者との面会は子供のために行うものです。

面会交流を決める手続

面会交流について双方で話し合いがまとまらない場合、裁判所を通じて解決する方法があります。
具体的には面会交流調停または審判を申し立てることになります。審判を最初から申し立てても、調停手続に付される可能性が高いため、まずは面会交流調停を相手の住所地を管轄する家庭裁判所に申立てましょう。
申立に必要な費用は収入印紙1200円/子供1人、郵便切手(要問合せ)となります。

調停手続の中で、面会交流の可否や条件などの話し合いを行うことになります。裁判所で試行的に面会の場を設けることもあります。話し合いがまとまれば調停条項が作成されることになります。

他方で話し合いがまとまらない場合、審判手続に移行して裁判所が面会交流の可否・条件について判断を下します。

面会交流の判断で考慮される事情

面会交流は子供のために実施されるものですので、無制限に認められるものではありません。子供にとって望ましくない場合、面会交流が認められないこともあります。

具体的には、非監護者の子供に対する虐待・暴力の有無、子の意思・年齢、面会交流の目的、監護者と非監護者との関係性などを総合的に考慮されることになります。


子供の福祉に配慮してきめます。

面会交流の実現方法

監護者が面会交流の合意又は審判の条件を守らず、面会交流が実現できないときは、裁判所を通じた履行勧告、又は間接強制の方法によってこれを実現する方法があります。
前者については、家事事件手続法289条で「(裁判所は)義務者に対し、その義務の履行を勧告することができる。」と規定されており、義務を履行するように勧告を求めることが出来ます。
後者については、間接強制金(履行をしないと1回あたり金銭の支払義務が生じる)を課す方法ですが、これが可能であるかは合意や審判の条件の記載如何によります。このあたりは非常に専門的な話になるため、弁護士などの専門家に相談したほうがよいでしょう。

(間接強制を否定した事例)
名古屋高裁令和2年3月18日決定
「面会交流を命ずる審判の後に年数が経過して,子の成長の段階が,上記審判が判断の基礎とし,想定した子の成長の段階と異なるに至ったために,監護親による面会交流に係る給付が,監護親の意思のみで履行することのできない債務となる場合があることは,面会交流を命ずる審判が予定するところであり,この場合において,子が非監護親との面会交流を拒絶する意思を示していることは,上記審判に基づく間接強制決定を妨げる理由となると解される。」
→間接強制の可否について、監護者の意思のみによって履行することのできない債務になっていると判断して、間接強制の申立てが認められたなかったもの。

(間接強制を認めた事例)
東京高裁令和元年11月21日決定
「本件面会交流調停において合意された面会交流実施要領は,面会交流の日時,各回の面会交流時間の長さ,子の引渡しの方法等が具体的に定められており,抗告人がすべき給付の特定に欠けるところはないと認められるから,抗告人に対し,本件面会交流調停に基づき間接強制決定をすることができる」
→面会交流の実施条件について、以下のような特定がされているケースで間接強制が認められています。

1 相手方は,申立人が当事者間の長男■■(平成〇年○月○○日生)及び二男■■(平成○年○月○○日生)に,平成○年○月以降月1回の割合で面会交流することを認める。ただし,長男との面会交流については,同人の心情に配慮しながら実施する。
2 その日時,場所及び方法については,次のとおりとする。
  (1)面会日  毎月第〇土曜日
  (2)面会時間 午前○時○分から午後○時○分まで
  (3)引渡場所 ○○県○○市(以下略)所在の〇〇前
  (4)引渡方法 相手方は,申立人に対し,面会開始時に上記引渡場所において前項記載の各未成年者らを引き渡し,申立人は,相手方に対し,面会終了時に同場所において各未成年者らを引き渡す。
  (5)代替日  当事者双方は,各未成年者らの病気等により面会交流ができないときは,第4土曜日に代替日を設定する。

通常の離婚調停でも付随的に面会交流の話し合いがされることはありますが、円滑に面会交流ができていないときは、「面会交流調停」を申し立てた方がよいでしょう。